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浦和家庭裁判所 昭和37年(家)537号 審判

本籍 埼玉県川口市 住所 同上

申立人 小山雪子(仮名)

国籍 韓国 住所 申立人に同じ

事件本人 朴久子(仮名)

主文

本籍及び住所 埼玉県川口市朝日町二丁目四五八番地小山雪子を事件本人の後見人に選任する。

理由

本件申立の要旨は、「申立人は事件本人の実母であるが、申立人と事件本人の父、朴有生(日本名村山明夫)とは、昭和三十一年十月二十五日婚姻届出をなし、昭和三十二年二月十二日事件本人を出生した。ところが申立人と事件本人の父、朴有生とは事情あつて、昭和三十三年八月十三日協議離婚をなし、その際、事件本人の親権者を韓国の民法により父である朴有生に定めたが、申立人は右離婚後も引続き事件本人を手許で養育し今日に至つている。

申立人は、事件本人の将来を考慮し、事件本人を日本に帰化させるべく、申立人において手続をすすめているが、唯一の親権者である父、朴有生は暫く所在不明でおり、最近北海道苫小牧市大町○番地大田司郎方に居住していることが判明したが、事件本人に対する親権を行使することができない状況にあるので、事件本人のために申立人を後見人に選任せられたく本件申立に及んだ」と云うのである。

よつて、記録添付の戸籍謄本一通、登録済証明書一通、離婚届に関する受理証明書一通、家庭裁判所調査官補村井三重子作成の後見人選任事件調査票の記載を綜合すると、次の事実を認めることができる。

一、申立人と事件本人の父、朴有生とは、昭和三十一年十月二十五日婚姻届出をなし、昭和三十二年二月十二日事件本人を出生したが、申立人と朴有生とは、昭和三十三年八月十三日事件本人の親権者を韓国の民法により父である朴有生と定めて、協議離婚をしたこと。

二、申立人は、右離婚後も引続き事件本人を手許において養育して来たが、申立人は事件本人の将来を考慮し、同人を日本に帰化させべく手続をすすめているが、事件本人が未成年者であるため右帰化申請は親権者又は後見人が法定代理人として申請しなければならないので現在その手続に苦慮していること。

三、事件本人の父、朴有生は申立人と離婚後、事件本人の養育を申立人に委ねて申立人の許を去つて以来、音信もなく所在不明であつたが、当裁判所の調査の結果、現在、北海道苫小牧市大町○番地大田司郎方に居住し、既に再婚し一子をもうけて生活していること。

四、朴有生は、家庭裁判所調査官補村井三重子に対し、「自分は現在再婚し、一子をもうけて生活しているが生活に安定性がない実情にあるから事件本人の養育については、今後も実母である申立人に一切を委ねたい、なお事件本人が日本に帰化することには異存なく、むしろ事件本人に対する親権を辞任したき旨」を陳述していること。

法例第二三条によると、後見は被後見人の本国法による旨定められており韓国民法第九二八条によれば「未成年者に対して親権者がないか又は親権者が法律行為の代理権および財産管理権を行使することのできないときは、その後見人をおかなければならない」旨規定している。そこで本件について考えるに前記認定の事実の下においては、親権者である朴有生は親権者としての権限を行使することができない状況にあるといわねばならないので、むしろ此の際事件本人に後見人を選任し、後見人をして帰化等の手続をなさしめるのが事件本人のために利益であると認められるから、本件申立は理由がある。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 岡咲恕一)

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